ボウリング・フォー・コロンバイン

寝る前にテレビのチャンネルを変えていたら、たまたまこの映画が始まったところだった。
そのまま吸い込まれるように見てしまった。


アメリカのコロンバイン高校で起こった乱射事件を中心に、
アメリ銃社会の現状をコラージュしている。
マイケル・ムーア自身によるインタビュー映像や、ニュース映像の洪水。
他の先進国では、多い国でも銃で殺害される人が年間500人程度。
一方アメリカは年間12000人。いったいなぜなのか。
銃規制の問題、貧困の問題、人種問題、家庭問題、アメリカの歴史、メディアの影響、
いろいろな視点から問題にどんどん切り込んでゆく。


全体を通して気付いたのは、物事を二極化させて判断することが
いろいろな弊害をもたらしており、このアメリカの問題にも通じるのではないかということ。
そして、それは対岸の火事ではないこと。


世の中の出来事は複雑だ。
でも、正義か悪か、損か得か、正解か誤りか、好きか嫌いか…
そういう風に二極化させて考えると話はわかりやすいし簡単になる。
アメリカの場合自分たちを正義とし、価値観の合わない相手を悪とみなす傾向があるように思う。
二つに分けて考えるから、当然歩み寄れるはずもなく
暴力に頼るしかなくなっているのかもしれない。
また、話が単純になるから深く考えなくてよくなり、思考停止状態になってしまう。


映画の中でも指摘されていたが、メディアがその二極化を煽っているふしがある。
特に正義か悪かに分けると、説明しやすくなるし
仮想敵ができることでストーリー性がでてきて視聴率も上がるだろう。
でもそれは、メディア側の価値観の押し付けではないだろうか。
そして最近の日本もその傾向があるように思う。


自分の価値観や押し付けられた価値観だけを正義と思えば、違う価値観に対して怒りがわく。
しかし、人の数だけいろいろな価値観があることを理解すれば、
怒りもあまり感じないし、感じたとしてもその違いを言葉で説明できる。
すぐ暴力に訴えることもないのでは。


テーマはアメリカの銃社会についてだったが、いろいろなことを考えさせられる映画だった。
テンポもよく、エンタテイメントとしても楽しめた。
偶然だったがいい映画を見ることができた。