NHKスペシャル 安全の死角

森ビルの回転ドア事故から1年。
森ビルと三和タジマはそれぞれ事故の原因究明と再発防止に努めてきた。
その取り組み具合を追ったドキュメンタリー。


当初ヨーロッパから輸入した回転ドアはアルミ製で軽かった。
しかし、豪華に見せるためにステンレスに変更し、重量が増す。
その重いドアを動かすためにたくさんのモーターをつける。
顧客の要望を聞き新機能をつけていくたびに、本来軽くなければいけないドアが重たくなり
その危険性に気付かぬままだったという。


開発メンバーが変わって、当初の前提条件がわからなくなったり、
改造を重ねていくうちに本来あるべき姿から離れていくことは良くある。
ドアに限らず、どの製造業でもありうることだろう。


技術者が気付かなかったことが問題、とだけ捉えてしまったら本質的でないと思う。
気付かなかったことも問題だが、じっくり検証する余裕が持てないことはもっと問題だ。
単にこの企業体質がそうだったというわけではなく構造的な問題のように思う。
情報システムの開発現場では、特にその傾向が顕著かもしれない。
簡単に修正できると思われているためか、顧客は次々に無理な要求をしてくる。
「別に業者はおたく以外にもたくさんあるから」といわれることもある。
また工期は短い。安全性、安定性を保証するためには十分な検証が必要だが、顧客側にその認識がない。


もちろんこの考えが、作り手側からの偏った見方であることは認識しているが、
技術力に対して相応の対価を払うという概念が日本の社会には欠けているのかもしれない。
軽自動車くらいの金額しか用意せず、「どうしてこの車はベンツでないのか?この車をベンツにしろ!」というようなもので
ベンツがほしいのならそれ相応の金額が必要だ。
技術者側もそれを認識してもらえるように働きかけていかなければいけないのだろう。


番組では回転ドアに限らず、シャッターや車のドア、家のドアなどの安全性検証も紹介していた。
あの事故をきっかけに大きく業界が動いているようだ。
事故を真摯に受け止め、改善しようとしている姿勢が見られ安心した。