THE WINDS OF GOD

映画化、ドラマ化などが予定されていて、いま再注目されているこの作品。
一目本物を見てみたくて、劇場に足を運んだ。
会場は満員。ステージ上にはぽつんと椅子があるだけ。
あまり演劇を見に来たことがないので、どうなるのかワクワクしながら待つことに。


売れない漫才師のアニキと金太が主人公。
最初は軽妙な漫才シーンから。
衆議院解散などの時事ネタも交えたり、舞台から降りてきたり、みるみる劇の世界に引き込まれた。


主人公たちが交通事故にあい、戦時中にタイムスリップ。 物語はいよいよ佳境に。
逃げようとする主人公たちと、特攻隊員たちは対立したり共感しあったり
ぶつかり合いながら問い掛ける。
「なぜ特攻をするのか?」


あと少しで終戦なのに、ひとりまたひとり特攻で散っていく隊員たち。
そして主人公たちも…。


戦争を美化するわけでもなく、悲惨さを強調するわけでもなく、
「国を、愛する人を守るために特攻する」という選択をする姿を
コミカルに淡々と表現している。
でも彼らの行く末を想像すると切なくてたまらない。


必死に国を守ろうとする姿は美しいけれど悲しい。
主役のアニキが、怒り、号泣し、感情をぶつける。
一方で特攻隊員は感情を押し殺す。
その対比が、戦争の悲しさや醜さを象徴しているようだった。


物語の奥には、彼らが今の私たちと同じ人間だということや、
特攻は相手を殺すことでもあること、
現代が平和すぎて平和でなくなっていること、
なにより、今生きていると言うこと自体が素晴らしいことだということ、
とても深くいろんなメッセージが込められていた。


最後はスタンディングオベーション
万雷の拍手で、今井雅之さんもすこし泣いていらっしゃったよう。
私も胸が熱くなった。
席を立つと、たくさんの若い人たちが一生懸命アンケートを書いていた。
この思いがいつか芽吹きますように。


戦後60年。今大きく世の中は変わり始めている。
このタイミングでこの舞台を見られたことに、ただただ感謝。
とてもいい舞台だった。

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